まほろば〜第2章
1
「空を飛ぶっていうのも、気持ちがいいもんだなあ・・・。」
良牙が隣でふわふわと暢気にはしゃいでいる。
俺たちは連れ去られたあかねと巻き込まれた早雲おじさん、なびき、親父の四人の影を追って、天界へと駒を進めることになった。
「そろそろ亜空間の入口です。しっかり付いて来てくださいよ。」
道彦が脇から声をかけてきた。
「良牙、しっかり付いて来いよ。こんなところで迷子になっちまったら帰れねえぞ。」
俺ははしゃいでいた良牙に喝をいれてやった。
「うるせえっ!わかってら・・・。」
良牙は折角の気分を台無しにされたのに腹を立てた様子で答えた。
「亜空間を抜けきるまではちょっときついですからねえ。私と建彦でガードさせていただきましょう。」
道彦はそう申し出た。
「ありがてえ・・・そうしてくれ。こいつ、迷子になりやすい体質してるんもんでなあ・・・。」
俺はそう言って笑った。
「うっせえ・・・。迷子は体質なんかじゃあねえだろうが・・・。」
良牙はぶつぶつ言いながら文句を垂れていた。
道彦と建彦に囲まれて、俺たち二人は天界への扉をくぐることになった。
前方には暑い雲が仁王立ちして、俺たち一行の突入を待ち構えていた。その向こう側に太陽が不気味に赤い光を放ちながら輝いていた。
「行きますよっ!」
道彦の合図に俺はゴクンと生唾を飲んだ。
雲と雲の合間にぽっかりと黒い空間が口を開けて待っていた。
中へ突入すると、目を開けていられないほどの荒れた空間が待ちうけていた。プラズマのような蒼い閃光が光り飛び、身体を揺すぶるような激しい風が前からも横からも吹き荒んでくる。
俺も良牙も道彦や建彦とはぐれないようにするのがやっとの状態だった。
どのくらいその空間を飛んでいたのか・・・。
行き先に出口が見えた。暗闇の向こう側に開いた光の空間。
俺たちがその出口に気が付いたときには、亜空間の時流の風がそこへ向かって一気に突き抜けていった。俺たちもその風に乗って、亜空間の腹の中から吐きだされた。
「ぶえっ!やっと息がまともに出きるぜっ!」
俺も良牙も水から這い上がったときのように、心臓が波打ち、息も上がっていた。
「あ、あれは・・・。」
落ちついた良牙が、前方を指差した。
二つの丸い塊が広がっているのが見えた。一つは赤く輝き、もう一つは蒼白く輝く。ニ連星のように互いに引き合って並んでいる。
「あれが私達の住む空間です。」
建彦が険しい表情で言い放った。
「私達の収める高天原の国と常世の国。」
道彦が補うように言葉を継いだ。
「高天原と常世の国って・・・。」
俺が言葉を失って途切れさせると
「そうです。私達の国、高天原と月読の国、常世は二つで一つの世界です。ああやってずっと釣り合って時を過ごしてきたんです。でも・・・。」
俺と良牙が目を凝らすと、心なしか蒼白い輪の方が勢力を増しているように見えた。
「バランスが崩れかかっているっていったところだな。」
良牙が言った。
道彦も建彦もこくりと頷いた。
「あのバランスが崩れ去ったら、私達の国、高天原はこの世界から消滅してしまうでしょう。常世の闇に被い尽くされて・・・。」
道彦が心痛に嘆くと
「いずれにしても、このまま見過ごす訳にはいかないのです。どうか、私たちに力をお貸し下さい。乱馬さん、良牙さん。」
建彦が続けて言った。
どっちにしても、俺達にはあかねや親父たちを助けなければならないという使命がある。引き受けるも何も、関っちまった以上やるっきゃないだろう。
「俺達に任しとけっ!。なあ乱馬。」
良牙が頼もしそうに返事をした。
「お、おうっ!」
正直、不安がない訳ではなかったが、俺も調子を合わせて返事をした。
「ならば、急ぎましょう。常世の者に見つかったらちょっと厄介なことになるので・・・。失礼っ!」
そう言うときいなり頭から衣を被せられた。
なんだ?」
俺が素っ頓狂な声を出すと、
天界の羽衣です。こうしておけば、常世の者から姿は見えない。さあ、急ぎましょう。」
・・・天界の羽衣か・・・。
手触りは絹衣のように滑った柔らかさがある。透明で薄い頼りなげな衣だ。
「あ。こらっ!良牙、そっちは常世の国だろうがっ!」
早速、方向音痴ぶりを発揮しようとした良牙の左手を俺は思いっきり掴んで引き戻した。
「なんだよっ!俺はおまえになんかに気はないぜっ!」
急に手を掴まれた良牙が抗議してくる。
「あほっ!冗談はいいから、こっちだっ!世話の焼ける奴めっ!」
俺はブツクサと言葉を投げつけると、道彦と建彦に付いて飛行を始めた。赤い光に包まれた世界の方へ向けて・・・。
・・・あかね、待ってろっ!おまえは絶対に俺が助け出してやるからな・・・。
俺は行く手の反対側に広がる常世の国の方をちらりと見やって、心で呟いていた。
・・・俺の大事な許婚。この手で月読から取り戻してやる・・・。
俺の心に反応するように懐の勾玉が熱を放った。
現在のところ再開のめどはたっておりません。
もう少し、修行を積んでから改めて再連載をしたいと・・・。今の私の構成力と文章力では完全に持て余しております(土下座!)
(c)2003 Ichinose Keiko